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2020年9月20日

日本の検挙数のうち、約5割は再犯者によるもの。電子監視の導入で日本の再犯も抑制できないか?

※本記事は、旧公式サイトで2020年9月21日に公開された記事を移植したものです。統計・制度・技術・価格等は執筆当時の情報です。

サマリー

  • 日本の検挙数のうち、約5割は再犯者によるものである
  • 仮釈放者が社会内処遇を受けられる一方で、満期釈放者は社会内処遇を受ける機会は設けられていない
  • 再犯抑止の効果や安全性についてのエビデンスの蓄積が進む社会内処遇として、海外では電子監視が注目されている

本文

近年、日本では初犯者は減少しているものの、その一方で検挙数に対する再犯者数の割合が上昇しています。平成28年度の犯罪白書によると、その割合は平成8年から平成27年まで毎年上昇し続けており、平成27年度には検挙者数に対する再犯者数の割合は48%にまで達したことがわかります。

では、このような状況の中で、どのような人が再犯者になっているのでしょうか。平成27年度の犯罪白書を見ると、満期釈放者の再犯率が仮釈放者の再犯率と比べて高いことが分かります。この両者の違いのひとつに、仮釈放を経験する人々が保護観察期間に社会内処遇として「保護観察対象者の改善更生を図ることを目的として、指導(指導監督)や支援(補導援護)」を受けられる一方で、満期釈放者は刑期を終える前に社会の中で更生する機会が与えられていないことがあります。犯罪者への社会的支援について扱っているMcdaniel(2014)で、地域社会における社会的結びつきを拡大または強化することができる犯罪者は、社会への再復帰がしやすいと指摘されていることを踏まえると、社会復帰を促すような支援が受けられないことが、満期釈放者の再犯率が高い原因のひとつであると考えられます。

このような状況の中、日本では2016年に刑務所で長期服役させるのではなく、社会の中で再犯防止を図る「刑の一部執行猶予」が導入されるなど、社会の中で犯罪者の構成を図る社会内処遇の考え方が制度として反映されつつあると言えます。しかし、社会内処遇を広めていくとすれば、現在の制度では施設内処遇を受けている暴力犯罪者も施設外で生活する可能性があるため、安全性に関して議論が起こることが予想されます。また、社会内処遇によって本当に再犯者が減るのかも疑問です。

一方、近年、これに関連して、海外では社会内処遇のひとつである「電子監視」という制度を設けて出所者の再犯を防いでいる国もあり、その効果や安全性についての研究も進んでいます。

電子監視とは、受刑者の足首に発信器を着用させ、決められた時間に在宅しているかどうかをランダムにチェックする制度のことです。電子監視には、①固定型電子監視と②移動型電子監視の2種類があります。①は1年以下の拘束刑の代替策としての電子監視措置であり、対象者に一定時間、一定場所に滞在することを義務付け、居宅滞在状態の位置情報確認を電子監視でしています。一方、②移動式電子監視は、フランス等で性犯罪等の重大犯罪の再犯防止及び被害者保護を目的に導入されています。電子監視に用いる器具は、届け出をすれば発信器をつけたまま仕事に出ることも可能な一方、発信器を壊したり外したりした場合、違反が発覚するようになっており、2013年の時点で、最低でもヨーロッパでは27ヵ国で、また、カナダ、アメリカ、韓国でも導入されています。

近年、海外ではこの電子監視による社会内処遇によって再犯を抑止するエビデンスが増えてきています。例えば、GPSを活用した電子監視が行われている国として、フランスが挙げられます。現在、フランスでは、①固定型電子監視と②移動型電子監視が活用されています。①の効果について検証した論文として、Henneguelle, A., Monnery, B., & Kensey, A.(2016)があります。この論文によると、フランスで2000年から2001年にかけて導入された、懲役刑の代わりに電子監視を用いた早期釈放プログラムでは、電子監視導入軍は被験者の個々の事情をコントロールしないときは、対照群より14%再犯率が低く、電子監視を導入した判決を出せる裁判所とそうでない裁判所の差を考慮しても、平均処置効果で再犯率は有意に減少(6~7%減少)していることが示されました。また、Bouchard & Wong(2017)では、14の論文を検討したメタアナリシス研究において、刑期中に電子監視を受けた群と懲役刑を受けた群を比較し、電子監視を受けた群の再犯率は有意に低いことが示されています。

また、電子監視を導入するメリットとして、電子監視中の犯罪者による再犯がほとんどないことも挙げられます。例えば、Marie.O.Moreton.K.&Goncalves.M(2011)では、イングランド・ウェールズで2000年から2006年に行われた準実験的研究において、電子監視を受けていた郡は監視を受けていなかった郡と比べて再犯者になる可能性は高くないことを指摘しています。

このように、海外では電子監視の導入によって再犯抑止が図られ、その効果が検証されつつあります。また、電子監視中の再犯率は少ないという研究結果もあり、社会内処遇において議論になりうる安全性についても問題はなさそうです。

では、日本でも海外諸国のように電子監視を導入して、年々増加し続けている検挙に対する再犯率を抑制できないのでしょうか?

まず、電子監視が再犯者に効果的であることを指摘しているBouchard & Wong(2017)を踏まえると、再犯者になる可能性の高い人が多く含まれる満期釈放者に対して電子監視を導入することが再犯抑止には効果的だと言えそうです。しかし、フランスや韓国のように保安処分が認められていない日本において、満期釈放後の受刑者に電子監視をつけることが、これまでの刑事政策となじむのかどうか検討される必要があります。また、電子監視が対象者のプライバシーへの過度な介入につながってしまうことも懸念されています。このような論点を踏まえ、今後、導入の実現にあたって、電子監視以外の社会内処遇の制度との費用対効果や導入可能性の比較も必要になってくるでしょう。

まとめ

電子監視は、早期釈放により社会内処遇を促進しつつ、受刑者の居場所を把握する仕組みです。いくつかの海外研究では電子監視によって再犯率が低くなることを指摘しており、実際に電子監視を導入している国もあります。現在、日本では検挙数の半分が再犯であり、社会内処遇を促進し再犯を減らすための手段として、電子監視の導入が前向きに検討されていくべきだと考えられます。ただし、その際には、日本の従来の刑事政策への影響や、電子監視の対象者へのプライバシーの侵害についても考慮する必要がありそうです。